香港のお正月2 -ホンモノの底力!!- 福臨門海鮮酒家
香港のお正月. の続き。

お昼の飲茶でお腹を満たした一行は、スターフェリーで一路、香港島へ。といってもわずか15分程度の船旅だ。春のように温かく海上を吹く風も心地よい。空には春霞、遠景はパステルカラーに・・・・

・・・いやこりゃ春霞なんてのどかなもんじゃない。なんだか喉がいがらっぽいぞ。どうやらこれは香港名物の光化学スモッグらしい。外を歩いているとすぐ気づくが、狭い土地にたくさんの車が密集して、おまけに隣接する深圳(しんせん)からは工業汚染されたスモッグが風に乗って流れ込んでくる。これで空気がきれいなわけがない。
あまり長く外気を吸っていると本当に喉がおかしくなりそうなので、定期的に喫茶店に入りお茶を飲んで休憩する。午後いっぱいをこうやって歩き回っては休憩、ショッピングモールに入っては一息、と出たり入ったりを繰り返して香港島をあちこち移動して散歩して過ごした。

陽が傾いてきた。そろそろ待ちあわせ場所のホテルのロビーに向かうことにしよう。待ちあわせの相手は友人カップルM&U。これから四人で香港の老舗、福臨門魚翅海鮮酒家でのディナーに向かう。現地でホンモノの広東料理をおせち代わりに爆食する! これが今回のテーマです。

予約しておいたからか、スムーズにテーブルまでご案内。豪華で落ち着いた雰囲気が期待を盛り上げる。壁には魚が泳ぐ大水槽が埋め込まれて、豪華で非日常なひとときを予感させている。友人カップルM&Uも子供のようにワクワクはしゃいでいる。
夜のコースはどれも安くはない。深呼吸してからお薦めコースをオーダーした。看板メニューをほぼ網羅していて一人前15000円、はっきり言って安くない。いや、安いか?日本でもこんな値段のコースの中華を頼んだことはないが、日本でコレ頼んだらいったいいくらかかることか。ここは一番、本場でこその贅沢をしてみるべき、と震える声でオーダーした。

ビールで乾杯している一同の前に軽快なステップで給仕が料理を運んでくる。簡単な箸休め、ついでフカヒレのスープが目の前に並べられた。琥珀色のスープの中から山盛りのフカヒレがのぞいている。口に含むと様々なエキスが渾然一体となった旨味と、それを吸い込んだフカヒレの歯ごたえがプチプチと口中にはじける。あああ~、これが伝統の広東料理、直球勝負の実力なんだなあ・・・・


続いてこれも看板メニューの干しアワビのスープ煮込みが運ばれてきた。なんでわざわざ生で刺身が十二分に美味いアワビを、わざわざ干して、それをまた煮て戻して、更にスープで長時間煮込んで完成なんて、なんでそんな面倒なことするのかな~? 私はこれまでずっと思っていました。刺身でいいじゃん、歯が悪いお年寄りは酒蒸しでいかが? なんて思ってました。だけど今日ワタシは理解しましたね。干して、戻して、スープで煮込む中で只のアワビがアワビを超越したの広東銘菜として完成されるということを。
口に含んだ瞬間、磯の香りがふんわりと漂い、柔らかく煮込まれた一片を噛みしめるとスープの旨味と凝縮したアワビの旨味が舌の上にジュワーっと広がる。その旨味がそのまま口中の粘膜から直接吸収されていく。なんという滋味深さ。ここまでの料理はどれも味は濃厚だが結構サッパリしている。

そこにカニの甲羅にカニ肉をめいっぱい、これでもか!これでもか!とギュ~ウギュ~ウ詰め込んだ蟹の甲羅パン粉焼きがやってきて気分を変えてくれる。蟹肉の淡い味付けが、もー美味いの美味くないのって、カニ好きにはタマリマセン。

お次はハトのローストだ。
小ぶりのハトが褐色に香ばしく焙られ、二つ割りになって皿一杯に並べられて供される。これは結構食べでがあり、余分な油が落ちているためシンプルな味付けにもかかわらずいくらでも食べられる! 骨も残さずしゃぶって味をチュ~チュ~と吸い尽くす。

ここまですでに結構な量を食べている。だけど全体にサッパリした味付けからかあまり胃にもたれない。そう、今回の滞在で食べた料理はどれも案外胃にもたれないのだ。なんで日本の中華とこんなに違った印象になるのか?


そして食事の〆は炒飯。それも只の炒飯ではない。アワビの旨味がとけ込んだスープを仕上げにたっぷり吸い込ませてある。自慢料理のアワビの煮込みが最後にまたカーテンコールで登場だ。

このあとはデザート、ココナッツミルクで煮込んだツバメの巣は温かくて体に優しくて胃がほっとするという医食同源を体現するような締めくくりとなった。最後にちょっとフルーツをつまみ、大満足のコースだった。

食事に満足してお茶を飲んでいるところに給仕長が挨拶にやってきた。
「ご満足頂けましたか?」達者な日本語だ。
「ええ、そりゃもう。ところでここの看板料理はなんですか?」
「ああ、それは皆さんの召し上がったコースにほとんど入っていますよ」
「フカヒレのスープ煮、アワビ、蟹のオーブン焼き、鳩のロースト、アワビ炒飯、ツバメの巣」
「ああ、なるほど。堪能できたわけですね。ところであの隣のテーブルで食べているのは?」
そう、さっきから気になっていたのだ。
中国人のご家族がお祝いか、一族でテーブルを囲んでいるのだが、宴もたけなわになったころ、こんがりときれいに褐色の焼き色のついた子豚の丸焼きが運ばれてきていたのだ。夢の中に出てきそうなくらい美味そうで豪華。あれ食べたいなぁ・・・
「あれもうちの看板メニューですよ。是非次回召し上がって下さい」
「おいくらぐらいするんですか?」
給仕長はちょっと小声になり少し近づいて言った
「一匹15000円でございます」
「うーん、けっこうしますね。でもそれだけの価値はありそうだなぁ」
「ちなみに日本ではその5倍いたします」
この人、なかなか商売上手。でもこういう店でこれだけのものを楽しめるならむしろお得?
「次回はあれを注文したいですね。また来られるように頑張りますよ」
「お待ちしておりますよ」と給仕長にっこり。
最初は清水の舞台から飛び降りるような気分だったけど、食後の幸福感はお値段を遙かに上回って、また次回ここにやってくるという目標と生きる活力をもらったのだから、これはとってもお得だったと言うべきだ。
次回はきっと子豚の丸焼きだ。
その日まで待ってろ香港、 福臨門酒家!
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